むかしむかしのことでございます。
阪神タイガースに 鳥谷という せんしゅがいました。
鳥谷は なりものりでプロいりしていらい そう こう しゅ そろったせんしゅとして かつやくしました。
ながねん タイガースのショートを 守りつづけ フルイニングしゅつじょうきろくが ぐんぐん 伸びて ゆきました。
- めでたしめでたし
- 全阪が泣いた
- なんかオチはあるんやろな?
- ここちょっと歴史の改変がされてますね
- 松・・・・坂・・・・?
- 金本「アカンな…ショート原口!w」
- 金本無能ちゃうか これ… 何で原口だけ残してんねん…
- 行くな、超えるな
- ワロタ
- ダメやんけ!
- えぇ…
- オワタ
- ここからの逆転劇だから……
- サヨナラ満塁ホームランやろな
- 終わりかい!
- 鳥谷なんもしてなくて草
- キャプテンシー発揮してたんやろ
- 現実は上手くいかないと教えてくれる名作
ところが 休まず はたらきつづけた 鳥谷は つかれからか じょじょに ふしんに おちいってしまいました。
打っても ボールに 力がありません。
とれるはずの だきゅうが がいやへ ぬけてしまいます。
鳥谷のふしんに 合わせるかのように チームも ていめいしてしまいました。
とりたには なきごとを いわず れんしゅうに とりくみました。
よる おそくまで 一人 バットをふりました。
わかてにまじって 毎日 どろんこになりながら ノックをうけました。
ほんのいっしゅんでも 鳥谷は さぼらなかったのです。
あさから ばんまで ちのにじむような とっくんを つづけました。
しかし それでも 鳥谷のちょうしは よくなりません。
しだいに チームのふんいきも わるくなります。
「鳥谷のせいで まけた」「鳥谷を つかうな」――そんなやじが あちこちから ひびきます。
めいよを ばんかい しようと ひっしにれんしゅうする 鳥谷も じしんを うしなってゆきました。
「もしかしたら おれは もう だめなのかもしれない」
「おれが いなくなれば かてるかもしれない」
ある日のことでした。
かんとくの元を たずねた鳥谷は しあいを休みたいと 言いました。
鳥谷は おこられるかもしれないと おもっていました。
かんとくの 金本は れんぞくフルイニングしゅつじょうの せかいきろくほじしゃです。
そんな てつじんのまえで 休みたいと よわねを はけば きっと しかられると おもったからです。
ところが かんとくは 「わかった」 とだけ 言ったのです。
「だいだで でばんが あるかもしれない。じゅんびは しておけよ」
かんとくは そう言って きょうの スタメンひょうを にらみました。
「ああ おれは かんとくにも みすてられたんだ」
鳥谷は うつむいたまま グラウンドへ もどりました。
その日 鳥谷が スタメンをはずれたことは 大きなニュースになりました。
つぎの日も そのつぎの日も 鳥谷は スタメンからはずれました。
ひにくなことに チームは いきおいをもりかえし れんじつ しょうりを おさめました。
「やっぱり 鳥谷が じゃまだったんだ」「いっしょう ベンチに いてくれや」
そんな 心ない ことばが ベンチにも きこえました。
鳥谷は なにも 言いかえせませんでした。
それから しばらくたった ある日のことです。
かんとくが れんしゅうをしていた 鳥谷の元へ やってきて 「きょう スタメンにするぞ」 と言いました。
鳥谷は おどろいて もうすこし まってほしいと おねがいしました。
かんとくは ふしぎそうなかおをして 「どこか わるいのか?」 とききました。
「けがをしているなら しかたがない。だが ずる休みは ゆるさないぞ」
かんとくは そう言って スタメンひょうに 鳥谷の名を かこうとしました。
「たしかに おれは もう げんきです」
鳥谷は言いました。
「でも しあいで かつやくするじしんが ないんです」
鳥谷は そう うったえました。
じぶんのせいで まけた じぶんのせいで しあいに出られない せんしゅがいた。
鳥谷はずっと うしろめたいおもいを ひきずっていたのです。
「きっと ファンや チームメイトは おれのことなんて 見たくもないのでしょう。しあいに出るのが こわいんです」
そう言って 鳥谷は きょうも休みたいと たのみました。
しかし かんとくは はじめて 鳥谷を しかりました。
「そんなのは あたりまえだ。それでも みんな いっしょうけんめいに やっているんだぞ」
「じしんが ない? トリ おまえに とうそうしんは ないのか。心まで ロボットに なってしまったのか」
鳥谷は はっとしました。
鳥谷は ずっと クールなせんしゅとして しられていました。
むずかしいプレーを たんたんと こなし めったに かんじょうを あらわさない。
しかし 心には いつも あつい とうそうしんを もやしていました。
だれよりも よろこび だれよりも くやしがる ひたむきな チームリーダーだったのです。
「おまえは そんな くらいせんしゅ じゃ ないだろう」
かんとくは いつのまにか おだやかに わらっていました。
「おまえの心には 弱虫 なまけ虫が すんでいるようだ。おれは そんな せんしゅは つかわないぞ」
かんとくは ふたたび きびしいひょうじょうに もどり スタメンひょうに ペンを はしらせようとしました。
「まってください」
鳥谷は 大きな へんじをしました。
「きょうの しあい おれを スタメンで つかってください。ぜんりょくで プレーします」
そう やくそくを したのです。
スタメンひょうを 見おろしていた かんとくのひょうじょうは 鳥谷からは わかりません。
しかし 鳥谷には かんとくが わらっているように 見えました。
3ばん ショート 鳥谷――
ひさしぶりに スタメンに 名を つらねた 鳥谷は グラウンドを かけまわりました。
心にすみついた 弱虫 なまけ虫と たたかいました。
いつも クールな 鳥谷は この日は ぜんりょくで プレーしました。
おいつけない ゴロでも とびついて 手をのばします。
へいぼんな ないやゴロでも けんめいに いちるいへ かけこみます。
ベンチで いちばん こえを 上げたのは 鳥谷でした。
鳥谷の ふっかつを見て チームは さらに かっきづきました。
せんしゅたちは ひとつ ひとつのプレーに みんな 鳥谷のように ぜんりょくで いどみます。
鳥谷も そんなせんしゅたちを見て レギュラーをとられまいと また フルイニングしゅつじょうを はじめました。
まけた 分だけ とりかえせ――そんなスローガンを かかげたチームは れんしょうかいどうを まっしぐら。
あっというまに しゃっきんを かんさい すると あれよ あれよのまに きせきの だいぎゃくてん ゆうしょうを はたしたのです。
クライマックスシリーズをかちぬき にほんシリーズに しゅつじょうした 阪神タイガース。
めいしゅ ソフトバンクホークスとの たいせんを まえに 金本かんとくは 言いました。
「どの メディアも ホークスが かつと おもっているようだ。だが かつのは おれたち タイガース。にほんじゅうの どぎもを ぬいてやれ!」
せんしゅたちは いっせいに かけごえで こたえました。
その わの 中には もちろん 鳥谷のすがたが ありました。
いよいよはじまった にほんシリーズ。
10年いじょう まえの くつじょくを せんしゅたちは おぼえています。
もう 弱虫 なまけ虫の せんしゅは いません。
目のまえの いっきゅう いっとういちだに だれもが ぜんりょくで いどみました。
ソフトバンクホークスと がっぷり四つに くみ合った 阪神タイガースは れんじつ いっぽも ゆずらぬ だいせっせん。
もつれこんだ だい7せんも どうてんのまま えんちょうせんに とつにゅうしました。
えんちょう 11回のこうげき 1てん とれば サヨナラ にほんいちが きまります。
なんとしても るいに 出たい そんなおもいで 鳥谷は だせきに立ちました。
いっきゅう いっきゅうを しんちょうに 見おくった 3きゅうめ。
インコースを えぐる 松坂のスライダーが 鳥谷のあしに ちょくげきしたのです。
甲子園に ひめいが 上がりました。
鳥谷は そのばに たおれこみました。
すぐに トレーナーがかけつけ 鳥谷のようすを かくにんすると 金本かんとくは だいそうを 出そうとしました。
鳥谷は すぐ 立ち上がって 「だいじょうぶです」 と言いました。
「おれは てつじん。これくらい へっちゃらです。それに もう 原口くんしか かわりが いませんから」
いつもの クールな ひょうじょうで いちるいにむかう 鳥谷に 拍手が おくられました。
しかし 鳥谷は くつうを かおに出すまいと ひっしでした。
はしることが できないかもしれないと かんじていました。
そのふあんは てきちゅうしてしまいます。
福留の うちゅうかんへの ツーベースヒットで にるいを けったしゅんかん 鳥谷は いたみで ころんでしまったのです。
なんとか にるいへ もどったものの とびだしていた 福留は アウト。
さらに ゴメスのヒットで さんるいを けり こんどこそ ホームを ねらったものの ぜんりょくしっそうが できなかった 鳥谷は はさまれ アウトになってしまったのです。
けっきょく このかいは むとくてんのまま しゅうりょうしました。
ベンチに もどると 金本かんとくや チームメイトが ふあんそうに 鳥谷を むかえました。
「だめなら 交代しなさい」
かんとくは なんども ねんをおしました。
それでも 鳥谷は くびを よこに ふりました。
てつじんとして チームリーダーとして いたいことは こうたいの りゆうに ならない。
「おれ 一人 にげるわけには いきません。みんなが いれば あしの いっぽんや にほん なんとも ありません」
てつじんの クールな ひょうじょう――その うらにひめた あつき ことばに チームいちどう きもちを ひきしめました。
つぎのかいの しゅびでは 鳥谷を たすけようと 藤川と 岡崎の バッテリーは くふうしました。
セカンドの 荒木 サードの 今成 レフトの 高山も いっぽ ショートに ちかづき だきゅうに そなえます。
ショートに立つ 鳥谷のもとには はげましの こえが なんども なんども きこえます。
鳥谷は みんなに ゆうきを もらいました。
しぜんと あしの いたみも きえてゆくようでした。
鳥谷は はじめて きがつきました。
だれも 鳥谷のことを きらってなど いなかったのです。
くるしいとき つらいときこそ みんなが きもちを 一つにして ひっしに ボールに くらいつく。
うてなくても まもれなくても みんなにとって 鳥谷は かけがえのない たのもしい チームメイトでした。
鳥谷が ふしんに おちいったとき しにものぐるいで どりょくしたことを みんな 知っていたのです。
「この かいを おさえて サヨナラで きめよう!」
鳥谷から せんしゅたちから ベンチから スタンドから そんな 力づよい 大きなこえが きこえました。
鳥谷も いっしょうけんめい こえを はりあげ もりたてます。
ねっきょうする 甲子園。
きせきの サヨナラに むけて 藤川が こんしんの いっきゅうを とうじました――
アナ「行くな! 行くな! 越えるな!」
(呆然とする金本→藤川→金本→ベースを回る畜生を順に映す。)
アナ「……悪夢のような現実がそこには待っていました。内川、勝ち越し3ラン……6対3!」
(顔面蒼白の藤川、表情をゆがめる岡崎、数回頷く金本。)
広澤「この大バッ……このバッターにこれだけまっすぐを続けたわけですからねぇ……悪夢ですなあ」
-完-
とりさんががんばってる間
大和はゴボウを耕してから しゅびにつきました