開幕3戦目、ベンチに怒声が響いた。「晋太郎! ウメ! 逃げるな!」この日、藤浪と梅野のバッテリーは初回に3失点した。右翼から見ていた福留は我慢ならなかった。打たれたことではない。外一辺倒の投球でやられたことが……。「今年は晋太郎がやらなきゃ、勝てない。それなのに、いきなり、あんな投球したことに腹が立ったんだよ」(中略)
5月末、藤浪が先発した試合で福留が延長12回にサヨナラ弾を打った。ただ、10回まで無失点の藤浪を勝ち投手にしてやることはできなかった。試合後、勝利の立役者はベンチ前で20歳下の後輩に頭を下げた。「勝たせてやれなくて、すまん」(中略)
9月。大一番となった21日のヤクルト戦で先発した藤浪は6回2失点ながら、チームは敗れた。優勝が遠のく敗戦だった。ショックを引きずったままの翌日、東京ドーム。福留は若きエースに穏やかな表情で声をかけた。「自分の調整を崩さないのもいいけど、体調によって、いろいろな調整の仕方を身につけておいた方がいいんじゃないか」(中略)
4月の怒りは5月の謝罪に、そして、9月の労いへ。福留が藤浪にかける言葉は変化していった。藤浪だけではない。週に1度、福留の休養日、右翼を任されていた狩野にはこう言って、肩の力を抜いた。「だれもお前の守備に期待していない。ミスしてもいいんだ。打って取り返すくらいに思ってやればいいんだ」
かつて個人主義と言われた男が仲間を鼓舞し、必死につないだ優勝への道だった。
引用元 「晋太郎! ウメ! 逃げるな!」福留孝介が阪神で本当に欲したもの。(2/3) – プロ野球 – Number Web – スポーツ総合雑誌ナンバー公式サイト
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